副代表の栗原です。
今日は、怪しいと言われやすい活法に科学のメスを入れてみます(笑)

■ 同期の実験

とりあえず、こちらの映像をご覧下さい。私たちの仕事と密接に関わっています。
時間のない方は、早送りしながら、途中の経過を追ってみてください。



活法(かっぽう)と何の関係があるのか、と思うかも知れません。私たちは「同調」という呼び方をしていますが、起こる現象は、この映像のように「同期」の一種と言えます。

人体も物理法則には逆らえないわけですから、メトロノームのような現象が体内で起こっているはずです。もし同期がなければ、体の細胞や組織などの各パーツは、タイミングがバラバラになってしまい、全体を統合できません。

こうした同期は体内だけで起こっているわけではなく、人と人との間でも起こると考えて間違いありません。ですから、患者さんと施術者の間でも当然起こっているのです。術者が患者さんペースに同期してしまえば、患者さんのテンポに。逆に、術者のテンポがベースになることもあるわけです。

体内には無数のテンポが複合的に折り重なってあるのだと思います。心臓の拍動リズムとタイピングのリズムは明らかに異なります。こうしたテンポというかリズムは、体調によって乱れるはずです。このように考えると、症状や病気は特有のリズムを持っていると考えることもできます。全体が持つリズムとかみ合わず、不調和のタネになっていると言えます。

「それならば、五十肩は何?」と聞かれても、今は誰も具体的に答えることはできません。しかし、いつか数学的に記述できる日が来るような気がします。


■ 不思議な力

治療とはリズムを整えることである、と解釈してみるのも面白いです。もちろん、一つの側面でしかないかもしれませんが、人体への理解が一歩深まるのではないでしょうか。元気な人の近くにいると元気になって、病気の人に近くにいると疲れるなど、誰もが体験したことがあるでしょう。

「気」の仕業であると説明されるより、私は同期現象であると言われた方が腑に落ちます。東洋医学の指す「気」が何であるか明快な答えはありません。とりあえずは、「何か」でもよいと思います。解明できる日がやってきたら、科学の言葉に置き換えればよい話です。

たとえば、空気のように。長い間、空気には何かしらのエネルギーを秘めていると考えられて来ましたが、今では、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などで構成された気体であることが分かっています。

「空気には特別なパワーがある」でもよいのですが、「空気には酸素が含まれていて、細胞内のミトコンドリアでATPを産生するのに使われている」と言う方がこの時代には親切な表現です。

同期の原理はまだ解明されていないようですから、この現象を「気のパワー」と説明することだって、場合によってはアリなわけです。ただし、無知であるが故に「気」という言葉を使わざるを得ないのはよくありません。

実際、人体に起こる現象には、不思議だと思うことがたくさんあります。科学の目で解明できないからと言って、インチキと決めつけることはできません。不思議な治療を否定するために使用される言葉の代表は「プラシーボ効果」だと思います。プラシーボ効果が科学で完全に解明されてしまえば、不思議な治療も合理的に見えるようになるでしょう。


■ ユラユラとした場

碓井流活法には、この同期現象を利用している技術があります。同期を受動的に待つのではなく、意図的に同期を仕掛けていきます。積極的に同期を起こせば技術になります。映像をご覧いただくとわかるように、メトロノームを乗せている台は、糸でつられています。このユラユラと動く場が同期現象では重要なようです。

治療という場においても、このユラユラした場を作ると、患者さんと施術者が同期しやすくなるはずです。患者さんが施術者のペースに心地よく巻き込まれていくケースです。逆なことが起こらないように、ユラユラとした場は施術者が支配できる状態でなければなりません。

緊張は同期を妨げます。相手のペースに巻き込まれたくないが故に防衛反応として緊張すると考えることもできます。ですから、私たちが患者さんを安心させて防衛反応を引き出さない工夫が大切です。そして、上手に同期を利用できるようになれば、「健康である」だけで患者さんを健康に導くことができるようになります。

繰り返しになりますが、ユラユラとした場を支配していることが重要です。そのために、術者がリラックスして余分な力を抜くことが条件です。まだ上手く説明できませんが、施術者自身が場になっていくような感覚です。その場の中で、術者は同期させたい事柄(治療対象)を抽出し、仮想的につくる「治った状態」に患者さんを巻き込んでいきます。


■ 脳のレベルで考える時代がやってくる

メトロノームの実験では5分くらいかけて同期していますが、人の場合は、一瞬にして同期が起こると思います。人体は脳がとても複雑な処理をしています。細胞や組織のレベルで説明できないことも、脳の「全体を統合している機能」に着目すれば説明が可能になるかもしれません。

これまで整体は、「骨盤が歪んでいるのが原因です」などと、見た目をピックアップし、そこに原因を押しつけているような節があります。「骨盤の歪みと腰痛には因果関係がない」という事実は、まだ専門家にも浸透していません。「カタチの歪み」で説明する方がウケるとしても、そろそろ本当の事を言った方がよい時期です。

結局のところ、活法を含む整体は治癒におけるメカニズムに謎を多く含みます。ただし、メカニズムの解明を待っていては、狭い範囲のことしかできません。また、そのメカニズムは、私たちが解明する必要もありません。科学者がいつの日か解明してくれるでしょう。生きている間とは限りませんが。

臨床家は、再現性の高い技術を追究していくことが仕事だと考えています。何度やっても同じ結果が出て、誰がやっても同じ結果となる技術。そうであれば、いつの日か、そこに科学のメスが入るはずです。

参考:同期現象の数理

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鍼灸師のための古武術医方 活法研究会
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