活レポ(活法研究会)

古武術整体「活法かっぽう」の症例報告とセミナー情報

2015年02月

美しい姿勢と活法

副代表の栗原です。
今回は、美しい姿勢について考えます。

■歪みの定義

女性の美しい姿勢活法が目指す良い姿勢は「真っ直ぐな姿勢」ではありません。ですが、真っ直ぐな姿勢が悪いという意味でもありません。活法で大切なのは「真っ直ぐな姿勢が正しい」と決めつけないことです。

「歪みが原因です」は、整体の世界では常套句です。

ここで言う「歪み」とはいったい何なのでしょうか。一般的に、「立った姿勢が曲がっている」、「寝た姿勢が曲がっている」と見た目を指していることが多いです。

碓井流活法では、「歪みのない状態」を「時と場合に応じた姿勢が取れる」と定義しています。裏返すと、歪みとは「時と場合に応じた姿勢が取れない」ことになります。簡単にいえば、「動きにくい」ことが歪みです。


■活法の目的

活法では、「動けるか、動けないか」に着眼しているので「見た目」を基準にすることはありません。活法の目的を一言で表してしまえば「動きやすい身体を取り戻す」ことです。動きやすく調整することで、さまざまな不調が回復します。すべての症状を「動きやすさ」を基準に診ることはできませんが、多くの症状が「動きにくさ」から生まれていることは間違いありません。

痛みはその代表です。多くの痛みの背景には「動きにくさ」が隠れているのです。内臓が関わる症状も、観察すると四肢の動きとの関係が見られます。

感覚的に理解して頂きたいのですが、「身体の調子が良い」というのは、自由にラクに動ける状態です。重さを感じず、思った通りに身体が動いてくれる状態です。脳で描いたイメージ通りに身体が動いているとき、肉体の存在を忘れることもあります。逆に調子が悪いときは、肉体の存在を必要以上に感じています。たとえば、胃は痛くなければ普段は存在を感じませんが、痛み出した途端に存在を感じます。


■姿勢は動きの一部

実際のところ、見た目に変化は起こるのでしょうか。結論から言うと、動きが変われば見た目も必ず変わります。見た目が変わる理由は簡単です。動きやすい姿勢になるからです。そもそも、姿勢というものは、「動きの一部」です。固まって動かないものは姿勢ではありません。

止まっているように見える姿勢も、次の動きに備える「動きの一部」と考えます。厳密な言い方をすれば、生きている以上、止まることはできません。手足の動きを止めても、呼吸をしている限り胸郭は動いてしまいます。皮膚も伸びたり縮んだりしています。起きている時も寝ているときも、生きているならば、動かない時は一時(いっとき)もないのです。

目的が、痛みの軽減であるならば、わざわざ姿勢の変化に注目する必要はありません。実際に、当会でも、変化の観察にかける時間はあまり多くありませんでした。しかし、この数年で状況は大きく変わってきました。多くの女性施術者から、活法の美容効果が報告されているのです。姉妹団体のダイエットアドバイザー協会では、姿勢の変化を観察しています。


■身体が求める姿勢

活法のように「動きやすさ」を追究した結果、二次的に起きている姿勢変化は意味深いものです。まず第一に、身体がその姿勢を望んだ結果です。誰かに強要されたものはなく、自らが選んだ姿勢であることです。第二として、「動きやすい」ことから行動が活発になり、所作がキレイになることです。魅力的に映ります。

次の写真は、活法によって起こった姿勢の変化です。大腰筋をはじめとするインナーマッスルに積極的にアプローチしたものです。Afterをご覧になるとき、リラックスして無理に背筋を伸ばしているような雰囲気がないことに注目してください。こうした変化は治療を目的とする施術者にとっても貴重な資料となるはずです。

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活法研究会 http://kappolabo.jp/

腸腰筋の研究−大腰筋と腸骨筋の連動を考える

副代表の栗原です。

教科書には載っているけれど、詳しい機能があまり知られていない腸腰筋の話です。
腸腰筋の理解を深めることで、次の3つのメカニズムがわかるようになります。

 1.姿勢の問題
 2.腰痛
 3.肩こり

それぞれに腸腰筋が関わっており、関わっていない場合でも、腸腰筋のような深層筋が深く関わっています。

インナーマッスルは、触れることができない体の奥深くに位置している筋肉です。インナーマッスルの中で最大級の筋肉は大腰筋です。腰椎から骨盤内を通って、股関節の内側に走る筋肉です。同じように股関節に内側と接続する腸骨筋と合わせて、腸腰筋と呼ばれています。

大腰筋腸骨筋

 ★腸腰筋
  └ ☆大腰筋(長い方、腰部から股関節の内側)
  └ ☆腸骨筋(短い方、腸骨の内側から股関節の内側)

腸腰筋の中でも、特に注目したいのは大腰筋の方です。その理由は、大きいからです。上端は胸椎の12番で、背中の方から骨盤を貫くように走り股関節の内側(大腿骨小転子)に届く長さがあります。これほど大きな筋肉であるにも関わらず、見ることも触れることもできません。意識しなくても誰でも使っています。

問題なのは、大腰筋の活動が低下しても、「大腰筋の問題」だと気がつかないところです。足腰が弱ってきた、という漠然とした感覚になってしまうのです。原因が漠然としていると対処しようがありません。活動低下がどんどん進んでしまうのです。老化が進んでしまう、と言い換えることができます。

大腰筋が特徴的なのは、反射的に働くことです。「力をギューと入れて…」と使うタイプの筋肉ではありません。伸ばされると、その反動で縮もうとする筋肉です。ですから、とても鍛えにくい筋肉で、トレーニングの穴になりやすいのです。表から見える筋肉をいくら太くしても、大腰筋が衰えていると、動きが若々しくなりません。

若い身体を保ちたいなら、大腰筋を無視するわけにはいきません。


■腸腰筋と姿勢の問題

姿勢にも深く関わっています。

大腰筋は、脚を後ろに引いた時に伸びます。この時、腰部に注目すると、脚を後ろに引くと、腰部が前の方に引っ張られて、いわゆる腰がそった状態になります。

大腰筋が衰えると縮んで硬くなります。すると、脚を後ろに引けなくなります。エビぞりもできなくなります。高齢になってくると腰椎の可動性が減るので“たわみ”が出なくなるため、大腰筋が縮むと、股関節を縮めて対応しようといます。その結果、前かがみ姿勢になりやすく「腰の曲がった」と言われる姿勢になります。裏返せば、大腰筋が活発であれば、腰椎が適度に刺激されるため腰椎の若さが保たれます。

身体を“反る”ことに着目してみると、大腰筋が重要ですが、逆に丸めようとする時に重要なのがハムストリングと呼ばれることが多い大腿二頭筋です。太ももの裏側の筋肉です。立位で前屈する時も長座で上体を倒しこむ時も、このハムストリングが突っ張ってきます。

 腰を反る  = 大腰筋(インナーマッスル)
 腰を丸める = 大腿二頭筋(アウターマッスル)

この2つの筋肉は拮抗する関係にあります。拮抗というと喧嘩しているみたいですが、実際には二つの筋肉が協力しあいながら引っ張いながらちょうどいいバランスにしているのです。ニュートラルな時の張力は均等が相応しいのです。厳密に言えば、バランス調整に関わる筋肉はこの2つではありませんから正しくないかもしれませんが、臨床上は、こうした理解で役立ちます。

たとえば、大腰筋に作用させたい時は、ハムストリングにアプローチし、逆にハムストリングにアプローチしたい時は、大腰筋にアプローチするのです。互いに力関係を合わせようとしますから、片方が緩めばもう片方が緩むのです。

直接触れることができない大腰筋に対しては、ハムスリングの調整が有効です。逆に、ハムストリングを調整するために大腰筋にアプローチしようと思っても直接的な刺激は困難です。しかし、問題はありません。古武術整体には、ハムストリングの性質を利用した手技があり、古武術鍼法には、ハムストリグに作用させるツボがあるからです。


■腸腰筋と腰痛

腸腰筋(大腰筋)の性質を知っていると、腰痛時の対処に幅が出ます。特に中高年の腰痛を分析する際には、欠けてはならない視点です。前屈、後屈で可動域制限がある場合、上記のように大腰筋とハムストリングの関係をチェックしておくことが大切です。大きな筋肉であるが故に、この2つの問題が存在していると、痛みが取れてもスッキリと解決しなかったり、頻繁に再発します。

腰痛予防にとっても、大腰筋とハムストリングの状態を整えておくことが大きな意味を持ちます。


■腸腰筋と肩こり

腸腰筋(大腰筋)は下半身だけの問題ではありません。

骨盤内にある腸骨筋(大腰筋、腸骨筋)は、脚の動きに深く関わっています。その脚は腕の動きと連動しています。四足歩行の動物にして考えると、骨盤から脚は後脚で、腕から肩甲骨は前脚です。

「前脚の異常=肩こり」

と考えれば、後脚である骨盤から脚の問題を放っておくことはできません。実際に多くの肩こりが下半身に原因があります。揉んでも治らない肩こりには、腰、臀部、脚のケアを意識することが大切です。


■大腰筋と腸骨筋の連動

この動画をご覧ください。弊社で作成した教材用の動画です。



脚を後方に振り上げると大腰筋が伸ばされ、収縮しようとします。ゴムのような弾力を体内で感じた後、脚は加速するように勢いよく戻ってきます。そのまま膝を高く引き上げようとすると、途中で腸骨筋のバトンタッチします。気がつかないようにバトンを渡すので、2種類の筋肉を感じ取るのは難しいでしょう。

大腰筋と腸骨筋は、大腿骨の小転子で一緒になっているので、一つの筋肉が二股に分かれているようにも見えます。構造的にも、2つの筋肉は連動して働くようになっているのです。この例のように身体は単独の筋肉を動かすように出来ていません。目的の動作のために、筋肉は他の筋肉と協調して働いています。

ですから、大腰筋に働きかけると腸骨筋にも作用が及びます。逆に、腸骨筋に働きかけると大腰筋に作用が及びます。このような理由で、この2つの筋肉は混同してしまいがちです。特に見かけるのは、腸骨筋の機能を大腰筋と勘違いしている例です。膝を高く上げる際に重要なの腸骨筋ですが、大腰筋の働きと解説されているものを多くみかけます。


■大腰筋の働きをチェックできる簡単な方法

スキップが上手にできるかどうかで、腸腰筋の状態を判断できます。もともと上手な人もいれば、そうでもない人もいるので個人差は考慮します。

スキップは、まさに腸腰筋のテストとトレーニングのために存在するような動きです。右脚で蹴っている時、大腰筋が引き伸ばされ、左脚は膝を高く引き上げるために腸骨筋が働いています。腸腰筋である、大腰筋と腸骨筋が同時に使われています。

右の腸骨筋を使って膝を高く上げるほど、左の大腰筋は伸ばされます。ですから、大腰筋の調子がよいほど、膝を楽に高く挙げることができます。こうした骨盤内の筋肉の動きを理解すると、スキップが、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)を鍛えるよいトレーニングになることがわかります。


■大腰筋トレーニング

反射を利用した大腰筋トレーニングを3つ紹介します。もうお分かりのように、大腰筋を鍛えようと思ったら、膝を高く振り上げるだけでは思うようにいきません。大腰筋が活動したくなる姿勢に追い込むところがポイントです。弊社制作の動画です。出演は、会員の谷口一也さんにお願いしました。



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運動前の鍼灸やマッサージは是か非か

副代表の栗原です。

前回の話は、静的ストレッチの問題点を活法の視点から解説してみました。一言で言えば、「筋肉の連動性を奪ってしまうため、パフォーマンスが下がりやすい」という話です(≫前回の話)。


運動前の鍼灸マッサージは良くないのか…


今回は、運動前の鍼灸やマッサージは、パフォーマンスにどのように影響するのかを考えます。開業してから12年が経ちますが、これまでの間、何人ものアスリートに関わってきました。プロは数えるほどですが、アマチュアは数えきれません。

彼らの中には、「鍼灸やマッサージの後、筋肉の力が抜けてしまうことはないですか?」と心配する方もいらっしゃいました。きちんとわかっている方だなぁ、と思います。結論を言ってしまえば、やり方次第で是にも非にもなります

やり方次第で、身体のパフォーマンスが上がります。
やり方次第で、身体のパフォーマンスを下げます。

何が違うのか、これから説明します。


■思い通りに動けること

まず、「思い通りに動ける」というのは、どんな状態でしょうか?

思い通りに動けるというのは、各部の筋肉が協調しながら働くことであり、イメージ通りの方向、イメージ通りの力加減が出せることです。また、とっさの出来事に瞬時に反応できることです。

<思い通りに動ける5つのポイント>

 1.肉体に疲労がないこと
 2.筋肉と筋肉が連動していること
 3.脳が肉体の使用度(負荷)を正確に把握していること
 4.脳が肉体の位置を正確に把握していること
 5.脳の肉体を操るイメージが正しいこと

この5つを理解しながらケアを行えば、アスリートのパフォーマンスは上がります。逆に、無視した施術を行うとパフォーマンスを下げる可能性があります。肉体疲労の解消だけを考えた鍼灸やマッサージであれば、パフォーマンスを下げてしまうかも知れません。2〜5を狂わせてしまう可能性があるからです。

これらは、活法の視点から私が独自に列記したものですが、一流のトレーナーであれば、同様のことを意識されていると思います。


■疲労や痛みが出るところ

痛みが出たり疲労が溜まる場所というのは、そのアスリートにとって「耐え所」です。そこで耐えることでパワーを出したり受け止めたりしています。そこを使いたがる癖があると考えてもよいです。トラブルが発生する所は「弱いところ」とすぐに考えてしまいがちですが、「使うのが得意なところ」という解釈もできるのです。得意であるが故に負荷を背負ってしまうのです。

裏返せばトラブルを起こしていない方に、使い方が不得意な部分、別の言い方をすると、負荷を背負っていない部分があるのです。ここをアスリート自身が気がつくのは難しいですし、気がつける人が一流になるのかもしれません。


■どこを刺激をするのか

鍼灸やマッサージで刺激したところは、血流が改善します。筋疲労も取れて痛みがあれば軽減するでしょう。気になる局所に直接施すのも一つの方法です。ただ、その局所が楽に感じるようになっても力が入りにくくなる場合があります。力が入りにくくならないように、方向性などを考えて行う必要があります。もし、そのような知識やスキルがないまま局所を緩めてしまうと、痛みや疲労は取れても力が入りにくい状態になってしまいます。

「ここやって」と刺激点を指図されながら、言われるがままに刺激をするケースでは、アスリートの想いとは裏腹にパフォーマンスがどんどん下がっているかもしれません。ですから、アスリートとトレーナーは対等な関係でなければうまくいきません。


■刺激量の問題

どこを調整するにしても、刺激量をコントロールすることが大切です。過剰な刺激は体を疲れさせてしまいます。痛みが取れても疲労感が強く出たらパフォーマンスに悪影響です。試合の数日前であれば、問題にならなくても、直前に疲労してしまうと取り返しがつきません。こうした理由から直前の鍼灸やマッサージを避けているアスリートもいます。


■活法の場合

活法はもともと古武術(柔術)の裏技ですから、「動きやすい」という観点で施術を行います。意図せずとも、活法の術理に従って施術をすると、アスリートのパフォーマンスを下げることはありません。筋肉を緩ませても、、必要な緊張は必ず残ります。

緩みすぎ、が問題になることはありません。

特に「導引(筋肉調整術)」では、対象となる関節や筋肉を複合的に動かしながら調整しているため、動きのために必要な要素を奪いようがありません。理屈を分からずに施術したとしてもパフォーマンスを下げる失敗になりにくいのです。

活法で痛みが取れるのは二次的な作用であり、一時的な作用は合理的な動きができることにあります。より良い身体の使い方に導くことによって、結果的に患部の負荷が減り痛みが軽減していくのです。

活法から生まれた古武術鍼法も、「動きをつくる」ことが目的ですから、アスリートのパフォーマンスを引き下げるようなことはありません。脳と肉体の関係性も向上します。スポーツ分野に活かされていくのはこれからです。

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