■才能と環境で決まる世界

副代表の栗原です。

活法研究会で講師を始めてから5年が経ちました。指導者の端くれとして、素通りできないテーマがあります。

それは「努力は報われるのか」というものです。

昨年に溯ります。為末大さんがツイッターで「やればできると言うがそれは成功者の言い分であり、例えばアスリートとして成功するためにはアスリート向きの体で生まれたかどうかが99%重要なことだ」と書いて波紋を呼んだことがありました。

いわゆる「炎上」した内容ですので、自分の立場を宣言すると危なっかしいことになりそうですが、思い切って書いておこうと思います。

まず、この言葉は陸上のトップアスリートと勝負をしていた為末さんの言葉であることに大きな意味があると思います。為末さんが世界と戦いながら感じた「実際」であるから、これは素直に受け止めておくべきでしょう。その上で、「努力する意味」について考えてみたいと思います。

報われない努力が好きな人はいません。「努力に意味がある」と言われても、いつまでも結果が出なければ慰めの言葉に聞こえてしまいます。

「アスリートとして…」という条件が付くと、為末さんのおっしゃるように、「才能と、環境がまず重要で、それが努力よりも先にくる。」は正しいと思います。金メダルは1つしかありませんから、頑張った全員が金メダルを取れるはずはありません。

DSCF8574
(写真:技術顧問=碓井誠)


■アスリートとビジネス(仕事)の違い

為末さんの主張は「為末大さんがハードルを選んだ理由」を読んだ方がわかりやすいと思います。「走ることと空中動作の『合わせ技』で勝負できる競技を探した。」とあります。さらに、「人生において『素の肉体勝負』をする機会はまずない。」という発言をされています。

こうした発言は、仕事にそのまま当てはめることできます。仮に暗算がいくら速くても、その能力だけで勝負できる仕事はありません。何か別のスキルと組み合わせなければ、暗算力は社会に活かせません。

私たちの職業(鍼灸師)で考えてみても、同じです。指先がいくら器用でもそれだけで患者さんを救えません。器用さは武器になっても勝負で大切なのは総合力です。

そもそも、ビジネス(仕事)には金メダルに相当するものがありません。売上げが多い方が偉いという考えもありますが、それは一つの価値観でしかありません。仕事には様々な価値観が入り込む余地があります。

ですから、誰の技術が世界一であるかはあまり重要ではなく、目の前にいる患者さんのために準備段階からベストを尽す方が重要だと思います。医療とは常によい結果が得られるわけではありません。治らなければ、全てが無駄になるかといえばそうではありません。結果が出なくても「治療に取り組む姿勢」が評価される場合だってあります。

とはいえ、そこに甘えてよいはずはなく、よい結果を出すことを常に考えるべきです。治療には、スポーツのように厳格なルールがありません。危険な行為やモラルに反する行為がNGなだけで、実は自由なことが多いのです。特に自由診療は、アイデアで勝負する世界です。「保険が効かない診療」ではなく、「自由なアイデアで勝負ができる診療」です。

つまり、為末さんが現役時代にやっていた、まさに「合わせ技」の勝負なのです。合わせ技が自由自在なジャンルにおいて、生まれながらの才能というものは意味をなさなくなります。なぜなら、自分が得意なものを合わせて自分の勝負球を作ればよいからです。頭脳も肉体も、自分の特性を知った上で、それを活かす組み合わせを考えることが重要です。

合わせ技が自由ならば、努力は報われます。ただ、私たちは「努力」という言葉は使わず「楽しむ」ことだけを考えています。だから、私たちが行う勉強会は、技術を楽しむことに主眼が置かれています。

DSCF7691
(写真:デモンストレーション風景)


■活法は総合力

活法も、まず自分の特性を知ることが重要です。そして、自分自身の肉体を活かす方法を考えることから始まります。体が大きい方が有利、力がある方が有利、という技も中にはありますが、逆に体が小さい方が有利、力を使ったらうまくいかない技もたくさんあります。

男性だから有利、女性だから有利、ということもありません。ルールが厳格なスポーツと違い、活法において、活法向きの体なんてものは存在しません。活法を始めるとわかりますが「自分の体の使い方を知る」ということに多くの時間を割くことになります。

この部分に関しては座学では無理です。実際に動いてみなければわかりません。やっていくと、自分の体を自在に操れることが、相手(患者さん)の体を操る第一歩であることに気がつきます。

鍼や灸だけを行う鍼灸師に対して、活法に取り組む鍼灸師は「己を知る」のがとても早いです。鍼灸でも体の使い方を学ぶことができるかもしれませんが、小手先でごまかせてしまうため、どうしても手先の器用さで比較されがちです。

手先が器用ですと一見上手に見えますが、重要なのは体全体の使い方です。剣術家が小手先で刀を振り回していないように、鍼も本来は小手先で使うものではありません。軽い道具ではありますが、体全体で使うのが本当の使い方です。

鍼灸師が整体を学ぶ意義は、テクニックを増やすだけではありません。鍼灸の使い方を見直すきっかけを与えてくれます。同じツボを使っているのに、鍼灸師によって効果が違う理由も見えてきます。

DSCF7980
(写真:参加者みんなで記念撮影)


■勉強会のご案内

活法研究会では、2つの方向から鍼灸師のレベルアップをサポートしています。整体術(活法)と古武術鍼法です。

古武術鍼法は、整体術を使い込んでいる人ほど早く習得できます。普段から体の使い方を意識しているからです。

「活法と鍼、どっちを先に受けた方がよいですか?」と訊かれることが多いので前もって
説明しますと、整体を先に受講する方が理想的です。鍼をする時に必要な体の使い方が上手になっているからです。

ただ、セミナーの日程は限られているので、スケジュールで都合がよい方を優先しても大丈夫です。古武術の経験も必要ありません。仮に、ツボの名前を忘れてしまっていても大丈夫です。私たちのセミナーは感性に訴えかけるものです。みなさん、同じ位置からスタートします。

鍼灸師のための古武術医方(整体&鍼灸)
初めての方におすすめのセミナー 今年は残り2回!
----------------------------------------------------------------
整体入門 肩こり編 12/14(日)〜15(月)
古武術鍼法<脊柱編> 11/30(日)〜12/1(月)
----------------------------------------------------------------