副代表の栗原です。

昨年あたりから、運動前のストレッチが「体に良くない」という情報が目立つようになってきました。これまで運動前のストレッチは当たり前でしたが、その常識も変わろうとしています。

ストレッチ

運動前のストレッチが良くない理由は、じっくり伸ばすと筋肉が収縮力を失ってしまい、最大収縮力(パワー)が出なくなるからです。いつもの感じで体が動かなくなり、パフォーマンスも下がり、怪我の確率も上がってしまいます。

正確な表現をすると、運動前に良くないのは、「静的ストレッチ」です。「ジワーと伸ばして待つ」タイプのストレッチです。これに対して動きながら収縮と伸縮を繰り返しながら筋肉の準備をしていくのが「動的ストレッチ」です。

静的ストレッチの問題点は、「筋肉が伸びきってしまい弾性が失われてしまう」と説明されています。古武術の視点からすると、もう一つ大きな問題があります。それは、「筋肉の連動性を奪ってしまうこと」です。むしろ、こちらの方が問題の主ではないかと考えています。

連動性のある動きは、体が勝手に動く無意識の動きです。飛んできたものをとっさに避ける時、バランスを崩して体を立て直す時、どこの筋肉を使おうか、と意識している人は誰もいませんよね。

静的ストレッチを指導された時、「伸ばす筋肉を意識しましょう」と言われたことはないでしょうか。しかし、実際の運動において、特定の筋肉を意識することは全体の協調性に対してはマイナスです。また、意識する場合も縮める側はできても、伸びる側の筋肉を意識するのは難しいのです。

動作時、特定の筋肉に意識を集中するのは良くないとした上で、次のようなことが言えます。

 静的ストレッチ : 伸びる側の筋肉に意識を向ける
 実際の運動 : 縮む側の方が意識しやすい

運動前にもっとも重要なのは、全身の協調性です。全体が一つの目的(動き)に対して協力的に作動するのが筋肉というものです。こうした視点からみると、特定の筋肉に過度な意識を集中させてしまうのが静的ストレッチです。運動直前でなければ、普段通りの生活をしているうちに協調性は戻っていきます。見方を変えれば、性的ストレッチは一時的に協調性を奪っていると言えます。

運動前に筋力をアップさせたい時は、縮む筋肉に意識を向けるのが有効です。活法では、上手にこの原理を利用しています。活法、とりわけ碓井流活法においては、全体の動きを整えることに重点を置いています。

時には意識の置き場を操作することもあります。筋肉に痛みがある時、その反対側の伸びる側の筋肉を(伸びるように)調整して、痛みの軽減をはかることがあります。痛みから意識をそらすことによって、自然な動きを回復させるテクニックです。

人間が動く時、筋肉は自然に動くものです。筋肉を動かそうと思って歩くわけではなく、歩こうと思って筋肉が動いているのです。「歩く」という意識で動いています。その意識に従って、必要な筋肉が必要なだけ働いているという順番です。活法は積極的に意識に働きかけて、最適な運動パターンに回復させていきます。

意識には、表面意識(顕在意識)と無意識(潜在意識)がありますが、活法ではどちらの意識にも働きかけます。時と場合と人によって、わかるように働きかける場合と、わからないように働きかける場合があります。

次回は、「運動前の鍼灸やマッサージは是か非か」を考えてみます。

活法研究会 http://kappolabo.jp/