副代表の栗原です。

前回の話は、静的ストレッチの問題点を活法の視点から解説してみました。一言で言えば、「筋肉の連動性を奪ってしまうため、パフォーマンスが下がりやすい」という話です(≫前回の話)。


運動前の鍼灸マッサージは良くないのか…


今回は、運動前の鍼灸やマッサージは、パフォーマンスにどのように影響するのかを考えます。開業してから12年が経ちますが、これまでの間、何人ものアスリートに関わってきました。プロは数えるほどですが、アマチュアは数えきれません。

彼らの中には、「鍼灸やマッサージの後、筋肉の力が抜けてしまうことはないですか?」と心配する方もいらっしゃいました。きちんとわかっている方だなぁ、と思います。結論を言ってしまえば、やり方次第で是にも非にもなります

やり方次第で、身体のパフォーマンスが上がります。
やり方次第で、身体のパフォーマンスを下げます。

何が違うのか、これから説明します。


■思い通りに動けること

まず、「思い通りに動ける」というのは、どんな状態でしょうか?

思い通りに動けるというのは、各部の筋肉が協調しながら働くことであり、イメージ通りの方向、イメージ通りの力加減が出せることです。また、とっさの出来事に瞬時に反応できることです。

<思い通りに動ける5つのポイント>

 1.肉体に疲労がないこと
 2.筋肉と筋肉が連動していること
 3.脳が肉体の使用度(負荷)を正確に把握していること
 4.脳が肉体の位置を正確に把握していること
 5.脳の肉体を操るイメージが正しいこと

この5つを理解しながらケアを行えば、アスリートのパフォーマンスは上がります。逆に、無視した施術を行うとパフォーマンスを下げる可能性があります。肉体疲労の解消だけを考えた鍼灸やマッサージであれば、パフォーマンスを下げてしまうかも知れません。2〜5を狂わせてしまう可能性があるからです。

これらは、活法の視点から私が独自に列記したものですが、一流のトレーナーであれば、同様のことを意識されていると思います。


■疲労や痛みが出るところ

痛みが出たり疲労が溜まる場所というのは、そのアスリートにとって「耐え所」です。そこで耐えることでパワーを出したり受け止めたりしています。そこを使いたがる癖があると考えてもよいです。トラブルが発生する所は「弱いところ」とすぐに考えてしまいがちですが、「使うのが得意なところ」という解釈もできるのです。得意であるが故に負荷を背負ってしまうのです。

裏返せばトラブルを起こしていない方に、使い方が不得意な部分、別の言い方をすると、負荷を背負っていない部分があるのです。ここをアスリート自身が気がつくのは難しいですし、気がつける人が一流になるのかもしれません。


■どこを刺激をするのか

鍼灸やマッサージで刺激したところは、血流が改善します。筋疲労も取れて痛みがあれば軽減するでしょう。気になる局所に直接施すのも一つの方法です。ただ、その局所が楽に感じるようになっても力が入りにくくなる場合があります。力が入りにくくならないように、方向性などを考えて行う必要があります。もし、そのような知識やスキルがないまま局所を緩めてしまうと、痛みや疲労は取れても力が入りにくい状態になってしまいます。

「ここやって」と刺激点を指図されながら、言われるがままに刺激をするケースでは、アスリートの想いとは裏腹にパフォーマンスがどんどん下がっているかもしれません。ですから、アスリートとトレーナーは対等な関係でなければうまくいきません。


■刺激量の問題

どこを調整するにしても、刺激量をコントロールすることが大切です。過剰な刺激は体を疲れさせてしまいます。痛みが取れても疲労感が強く出たらパフォーマンスに悪影響です。試合の数日前であれば、問題にならなくても、直前に疲労してしまうと取り返しがつきません。こうした理由から直前の鍼灸やマッサージを避けているアスリートもいます。


■活法の場合

活法はもともと古武術(柔術)の裏技ですから、「動きやすい」という観点で施術を行います。意図せずとも、活法の術理に従って施術をすると、アスリートのパフォーマンスを下げることはありません。筋肉を緩ませても、、必要な緊張は必ず残ります。

緩みすぎ、が問題になることはありません。

特に「導引(筋肉調整術)」では、対象となる関節や筋肉を複合的に動かしながら調整しているため、動きのために必要な要素を奪いようがありません。理屈を分からずに施術したとしてもパフォーマンスを下げる失敗になりにくいのです。

活法で痛みが取れるのは二次的な作用であり、一時的な作用は合理的な動きができることにあります。より良い身体の使い方に導くことによって、結果的に患部の負荷が減り痛みが軽減していくのです。

活法から生まれた古武術鍼法も、「動きをつくる」ことが目的ですから、アスリートのパフォーマンスを引き下げるようなことはありません。脳と肉体の関係性も向上します。スポーツ分野に活かされていくのはこれからです。

活法研究会 http://kappolabo.jp/