副代表の栗原誠です。

スキーをやったことがある人もない人も聞いてほしい話です。
スキーブーツにまつわる話です。

スキーのブーツは、プラスチックで出来たカチカチのシェルに、少しフワフワしたインナーの二重構造です。スキーの板に力を加えるために、強度が必要でカチカチは仕方ありません。スキーのブーツは、「ブーツ」と呼ばれているものの中で一番硬いのではないでしょうか。

柔らかいインナーがあるとはいえ、カッチカッチの箱の中に足を収めるわけですから、人によって(というより、ほとんどの方)は、長時間履いていると窮屈さを感じます。時には痛みが出てしまいます。スキーをしたくない理由に、もしかしたらこのブーツ問題があるのかもしれません。

私は、18歳頃から本格的にスキーを始めました。雪の季節にはスキー指導のアルバイトをしながら腕を磨き、大会にも出場していました。お金がかかるスポーツですから、鍼灸学校入学とほぼ同時にペースダウン。ここ5〜6年はスキーから離れていました。

実は、スキーから離れていたのは資金の問題だけではありません。ブーツの問題がありました。「もうこれ以上、痛みを我慢しながらスキーをしたくない」と思っていました。楽しむつもりが、苦痛との戦いになってしまうのが嫌だったのです。足の小指の付け根の骨は少し変形しています。

あきらめられるように、道具一式は処分してしまいました。でも、ある人が私をスキーの世界に引き戻してしまったのです。

彼は突然やってきました、活法研究会に。

私と同じ年の彼は、まだスキー競技を現役でやっています。その彼に起こされてしまったのです。最悪(?)なことに、彼は、活法の技術をスキーなどの競技に活用していきたいと考えているのです。一度、心がスキーに引き戻されてしまうと、もう自分では止められません。

ここで、再び問題になるのがブーツです。
あのカッチカッチ野郎とどう付き合っていけばよいのか…。

快適に滑れるスキーブーツを作らなければなりません。スキーと活法を考える上でこれが条件です。スキーブーツの職人を探し、あるところにたどり着きました。そして、スキーブーツの設計者に話を聞くことができました。

私が抱えていた問題の原因が、ここで明らかになりました。その原因が、私が何となく感じていた不具合と一致したので、「これは!」と思いました。ブーツ設計の考え方、ブーツチューンナップの考え方が、活法にそっくりだったのです。

多くの整体は、静止した状態で身体の問題点を探します。たとえば、立位で骨盤の高さが違うとか、肩の高さがが違うなどと。活法は違います。碓井流活法は、止まった状態での姿勢を「死勢」と表現します。動いてナンボの人間を止めて観察しても、生きた情報は得られないということなのです。活法では、静止した状態での、形の美しさではなく、どんな動きでもできる状態を目標に調整します。結果、安定して動く姿が美しいのです。

多くの整体がそうであるように、多くのブーツ加工職人も、静止状態で問題点を探そうとします。床の上でキレイに立てる状態を作ることが多いのです。または、ブーツのシェル(プラスチック)と足がぶつかって痛いところを削ったり広げたりして、痛みを緩和させます。

ゲレンデに出ると、斜面や雪質は刻々と変化します。同じ斜面は二度とありません。上手なスキーヤーの身体は安定していますが、止まっているからではなく、状況に合わせて動いているからです。床の上でよい姿勢になることと、どんな斜面に対応できる姿勢とは全く次元の違う話です。

スキーブーツの設計時点では、雪の斜面の上で動けることを目指していますが、加工の段階になると、雪の上ではなく床の上になってしまうことが多いのです。人間も、どんな状況下でも動けるように骨格が設計されているはずなのに、いざ調整となるとベッドに寝かせられたり、直立した状態で判断されることが多いのです。

ブーツの設計者は言っていました。「世界の一流選手であっても、足は平均であると限らない」と。選手それぞれが個性を持っているということです。平均に近づけるように身体をいじったり、ブーツを調整すると、返って成績が落ちることがあるそうです。

「個性を認める」というスタンスのブーツ作り。
・・・活法と全く同じです。

患者さんの身体が歪んでいるように見えても、それが問題を引き起こしているとは限らないのです。もっと重要なのは、動こうとした時に、動いた時に、何が邪魔をするのかです。そこを見抜くには、患者さんに動いてもらって問題点を探す必要があります。

ブーツ設計者に足を観てもらった私は言われました。「あなたの足もブーツも悪くありません。足がブーツに入った時に正しい動きができないのが問題なのです。」と。

人がストレスを感じるのは、置かれた環境の中で自由に動けなかったり、自由な思考が許されない時です。平均に近づけようとする骨格矯正が本当の自由をもたらすのか、冷静に考える時代がやってきていると思います。

活法と同じ理論で作るブーツで滑るのは12月の予定です。
活法研究会スキー部(仮)から、また報告します。