副代表の栗原です。
本日、テニス部の高校生が初診でやってきました。

1月6日の記事に続き、肘ネタです。

その女子高生は、テニスの練習で利き手(右)の肘を痛めてしまいました。肘といっても、肘から数センチ上った上腕二頭筋の内側。

まずはラケットを握って構えてチェック。
施術前の状態を確認してもらいました。

問診を終えてさっそく活法に。
問題の右肘を右手で支え、左手は患者さんの右手に。ゆっくりと曲げ、手首を返し、もう一度伸ばします。1月6日に書いた記事と全く同じ手技です。

そして、もう一度ラケットを握って、「さぁ、どうですか?」

「何でもありません」

と、瞬間変化(=秒活)を期待するわけですが、そうはいきませんでした。そうではないかと思っていたので、気持ちは焦りません。負け惜しみなんかではありません(笑)

「この手技がどこまで通用するのか…」と、術の効用範囲を確かめることで臨床の精度を上げる地味な作業も必要です。残念ながら、この症例に関しては精度を下げてしまいました。

難しい場面に遭遇したときは、こういった試行錯誤で培ったものが必ず役に立つでしょう。難しい症例では、最も効果の高い手技をピタっと合わせて行かなければ太刀打ちできないからです。

第一の手技で肘関節は緩んで可動域が増しました。しかし、痛みが取れていない。ということは、痛みは肘の問題ではないということになります。次に狙いをつけたのは肩甲骨の動きです。軽く触るとくすぐったがります。患側(悪い方)の肩甲骨周辺は筋肉の緊張が目立ちます。肩甲骨の動きが悪いために、上腕に負担がかかっていると踏んだのです。

それが正しいかどうかは、やってみればわかります。導引という筋肉調整術で肩甲骨の緊張を抜きます。他の手技で大胸筋や鎖骨周りの緊張を抜きます。すると、ラケットを握った時に痛みが軽減。6割減で症状の残りは4割というところ。上腕二頭筋の過緊張部位(局所ではない部位)を探し当て、鍼で緩めました。その結果、残りの4割が消失し痛みがゼロに。

痛みを取るだけなら、上腕二頭筋の鍼だけで対応できたと思います。ただ、この症例の場合、テニスをしても大丈夫な状態にもっていくことが望まれているわけですから、施術室で痛みが軽くなっただけでは、目的に達しているかどうかわかりません。

動かしてどうなのか、という立場から考えると、動かしやすい状態にして、一部の筋肉に過剰な緊張が発生しないように整える必要があります。この症例では肩甲骨の動きに着目し、実際のテニスにおいて負荷が軽減されるように仕掛けました。それだけで症状の6割が減しました。逆に、ここに着目せず痛みだけを狙っていくと、この6割を残してしまうことになります。

この症例では、「痛みのある筋肉に鍼を使う」という選択をしましたが、肩甲骨の動きの改善という段階においても鍼を使うことができます。活法は運動改善、鍼は痛みの緩和、と使い分ける必要はありません。

この症例は初診であったこともあり、上腕に発生した痛みと肩甲骨の動きの悪さに関連があることを患者さんに理解してほしいという狙いがありました。再び肘が痛くなったとき、体の使い方を見直すきっかけになります。そして、その方がテニスの上達にプラスにもなるでしょう。

痛みを取るということだけに着目すると「どっちでもいい」ということになると思います。ただ、テニスをしても大丈夫という状態にもっていくためには、動きの改善を伴う方法の方がよいと考えます。螺旋の動きを調整する活法の手技、鍼灸で代わりになるものを知りません。