活レポ(活法研究会)

古武術整体「活法かっぽう」の症例報告とセミナー情報

姿勢

美しい姿勢と活法

副代表の栗原です。
今回は、美しい姿勢について考えます。

■歪みの定義

女性の美しい姿勢活法が目指す良い姿勢は「真っ直ぐな姿勢」ではありません。ですが、真っ直ぐな姿勢が悪いという意味でもありません。活法で大切なのは「真っ直ぐな姿勢が正しい」と決めつけないことです。

「歪みが原因です」は、整体の世界では常套句です。

ここで言う「歪み」とはいったい何なのでしょうか。一般的に、「立った姿勢が曲がっている」、「寝た姿勢が曲がっている」と見た目を指していることが多いです。

碓井流活法では、「歪みのない状態」を「時と場合に応じた姿勢が取れる」と定義しています。裏返すと、歪みとは「時と場合に応じた姿勢が取れない」ことになります。簡単にいえば、「動きにくい」ことが歪みです。


■活法の目的

活法では、「動けるか、動けないか」に着眼しているので「見た目」を基準にすることはありません。活法の目的を一言で表してしまえば「動きやすい身体を取り戻す」ことです。動きやすく調整することで、さまざまな不調が回復します。すべての症状を「動きやすさ」を基準に診ることはできませんが、多くの症状が「動きにくさ」から生まれていることは間違いありません。

痛みはその代表です。多くの痛みの背景には「動きにくさ」が隠れているのです。内臓が関わる症状も、観察すると四肢の動きとの関係が見られます。

感覚的に理解して頂きたいのですが、「身体の調子が良い」というのは、自由にラクに動ける状態です。重さを感じず、思った通りに身体が動いてくれる状態です。脳で描いたイメージ通りに身体が動いているとき、肉体の存在を忘れることもあります。逆に調子が悪いときは、肉体の存在を必要以上に感じています。たとえば、胃は痛くなければ普段は存在を感じませんが、痛み出した途端に存在を感じます。


■姿勢は動きの一部

実際のところ、見た目に変化は起こるのでしょうか。結論から言うと、動きが変われば見た目も必ず変わります。見た目が変わる理由は簡単です。動きやすい姿勢になるからです。そもそも、姿勢というものは、「動きの一部」です。固まって動かないものは姿勢ではありません。

止まっているように見える姿勢も、次の動きに備える「動きの一部」と考えます。厳密な言い方をすれば、生きている以上、止まることはできません。手足の動きを止めても、呼吸をしている限り胸郭は動いてしまいます。皮膚も伸びたり縮んだりしています。起きている時も寝ているときも、生きているならば、動かない時は一時(いっとき)もないのです。

目的が、痛みの軽減であるならば、わざわざ姿勢の変化に注目する必要はありません。実際に、当会でも、変化の観察にかける時間はあまり多くありませんでした。しかし、この数年で状況は大きく変わってきました。多くの女性施術者から、活法の美容効果が報告されているのです。姉妹団体のダイエットアドバイザー協会では、姿勢の変化を観察しています。


■身体が求める姿勢

活法のように「動きやすさ」を追究した結果、二次的に起きている姿勢変化は意味深いものです。まず第一に、身体がその姿勢を望んだ結果です。誰かに強要されたものはなく、自らが選んだ姿勢であることです。第二として、「動きやすい」ことから行動が活発になり、所作がキレイになることです。魅力的に映ります。

次の写真は、活法によって起こった姿勢の変化です。大腰筋をはじめとするインナーマッスルに積極的にアプローチしたものです。Afterをご覧になるとき、リラックスして無理に背筋を伸ばしているような雰囲気がないことに注目してください。こうした変化は治療を目的とする施術者にとっても貴重な資料となるはずです。

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活法研究会 http://kappolabo.jp/

腸腰筋の研究−大腰筋と腸骨筋の連動を考える

副代表の栗原です。

教科書には載っているけれど、詳しい機能があまり知られていない腸腰筋の話です。
腸腰筋の理解を深めることで、次の3つのメカニズムがわかるようになります。

 1.姿勢の問題
 2.腰痛
 3.肩こり

それぞれに腸腰筋が関わっており、関わっていない場合でも、腸腰筋のような深層筋が深く関わっています。

インナーマッスルは、触れることができない体の奥深くに位置している筋肉です。インナーマッスルの中で最大級の筋肉は大腰筋です。腰椎から骨盤内を通って、股関節の内側に走る筋肉です。同じように股関節に内側と接続する腸骨筋と合わせて、腸腰筋と呼ばれています。

大腰筋腸骨筋

 ★腸腰筋
  └ ☆大腰筋(長い方、腰部から股関節の内側)
  └ ☆腸骨筋(短い方、腸骨の内側から股関節の内側)

腸腰筋の中でも、特に注目したいのは大腰筋の方です。その理由は、大きいからです。上端は胸椎の12番で、背中の方から骨盤を貫くように走り股関節の内側(大腿骨小転子)に届く長さがあります。これほど大きな筋肉であるにも関わらず、見ることも触れることもできません。意識しなくても誰でも使っています。

問題なのは、大腰筋の活動が低下しても、「大腰筋の問題」だと気がつかないところです。足腰が弱ってきた、という漠然とした感覚になってしまうのです。原因が漠然としていると対処しようがありません。活動低下がどんどん進んでしまうのです。老化が進んでしまう、と言い換えることができます。

大腰筋が特徴的なのは、反射的に働くことです。「力をギューと入れて…」と使うタイプの筋肉ではありません。伸ばされると、その反動で縮もうとする筋肉です。ですから、とても鍛えにくい筋肉で、トレーニングの穴になりやすいのです。表から見える筋肉をいくら太くしても、大腰筋が衰えていると、動きが若々しくなりません。

若い身体を保ちたいなら、大腰筋を無視するわけにはいきません。


■腸腰筋と姿勢の問題

姿勢にも深く関わっています。

大腰筋は、脚を後ろに引いた時に伸びます。この時、腰部に注目すると、脚を後ろに引くと、腰部が前の方に引っ張られて、いわゆる腰がそった状態になります。

大腰筋が衰えると縮んで硬くなります。すると、脚を後ろに引けなくなります。エビぞりもできなくなります。高齢になってくると腰椎の可動性が減るので“たわみ”が出なくなるため、大腰筋が縮むと、股関節を縮めて対応しようといます。その結果、前かがみ姿勢になりやすく「腰の曲がった」と言われる姿勢になります。裏返せば、大腰筋が活発であれば、腰椎が適度に刺激されるため腰椎の若さが保たれます。

身体を“反る”ことに着目してみると、大腰筋が重要ですが、逆に丸めようとする時に重要なのがハムストリングと呼ばれることが多い大腿二頭筋です。太ももの裏側の筋肉です。立位で前屈する時も長座で上体を倒しこむ時も、このハムストリングが突っ張ってきます。

 腰を反る  = 大腰筋(インナーマッスル)
 腰を丸める = 大腿二頭筋(アウターマッスル)

この2つの筋肉は拮抗する関係にあります。拮抗というと喧嘩しているみたいですが、実際には二つの筋肉が協力しあいながら引っ張いながらちょうどいいバランスにしているのです。ニュートラルな時の張力は均等が相応しいのです。厳密に言えば、バランス調整に関わる筋肉はこの2つではありませんから正しくないかもしれませんが、臨床上は、こうした理解で役立ちます。

たとえば、大腰筋に作用させたい時は、ハムストリングにアプローチし、逆にハムストリングにアプローチしたい時は、大腰筋にアプローチするのです。互いに力関係を合わせようとしますから、片方が緩めばもう片方が緩むのです。

直接触れることができない大腰筋に対しては、ハムスリングの調整が有効です。逆に、ハムストリングを調整するために大腰筋にアプローチしようと思っても直接的な刺激は困難です。しかし、問題はありません。古武術整体には、ハムストリングの性質を利用した手技があり、古武術鍼法には、ハムストリグに作用させるツボがあるからです。


■腸腰筋と腰痛

腸腰筋(大腰筋)の性質を知っていると、腰痛時の対処に幅が出ます。特に中高年の腰痛を分析する際には、欠けてはならない視点です。前屈、後屈で可動域制限がある場合、上記のように大腰筋とハムストリングの関係をチェックしておくことが大切です。大きな筋肉であるが故に、この2つの問題が存在していると、痛みが取れてもスッキリと解決しなかったり、頻繁に再発します。

腰痛予防にとっても、大腰筋とハムストリングの状態を整えておくことが大きな意味を持ちます。


■腸腰筋と肩こり

腸腰筋(大腰筋)は下半身だけの問題ではありません。

骨盤内にある腸骨筋(大腰筋、腸骨筋)は、脚の動きに深く関わっています。その脚は腕の動きと連動しています。四足歩行の動物にして考えると、骨盤から脚は後脚で、腕から肩甲骨は前脚です。

「前脚の異常=肩こり」

と考えれば、後脚である骨盤から脚の問題を放っておくことはできません。実際に多くの肩こりが下半身に原因があります。揉んでも治らない肩こりには、腰、臀部、脚のケアを意識することが大切です。


■大腰筋と腸骨筋の連動

この動画をご覧ください。弊社で作成した教材用の動画です。



脚を後方に振り上げると大腰筋が伸ばされ、収縮しようとします。ゴムのような弾力を体内で感じた後、脚は加速するように勢いよく戻ってきます。そのまま膝を高く引き上げようとすると、途中で腸骨筋のバトンタッチします。気がつかないようにバトンを渡すので、2種類の筋肉を感じ取るのは難しいでしょう。

大腰筋と腸骨筋は、大腿骨の小転子で一緒になっているので、一つの筋肉が二股に分かれているようにも見えます。構造的にも、2つの筋肉は連動して働くようになっているのです。この例のように身体は単独の筋肉を動かすように出来ていません。目的の動作のために、筋肉は他の筋肉と協調して働いています。

ですから、大腰筋に働きかけると腸骨筋にも作用が及びます。逆に、腸骨筋に働きかけると大腰筋に作用が及びます。このような理由で、この2つの筋肉は混同してしまいがちです。特に見かけるのは、腸骨筋の機能を大腰筋と勘違いしている例です。膝を高く上げる際に重要なの腸骨筋ですが、大腰筋の働きと解説されているものを多くみかけます。


■大腰筋の働きをチェックできる簡単な方法

スキップが上手にできるかどうかで、腸腰筋の状態を判断できます。もともと上手な人もいれば、そうでもない人もいるので個人差は考慮します。

スキップは、まさに腸腰筋のテストとトレーニングのために存在するような動きです。右脚で蹴っている時、大腰筋が引き伸ばされ、左脚は膝を高く引き上げるために腸骨筋が働いています。腸腰筋である、大腰筋と腸骨筋が同時に使われています。

右の腸骨筋を使って膝を高く上げるほど、左の大腰筋は伸ばされます。ですから、大腰筋の調子がよいほど、膝を楽に高く挙げることができます。こうした骨盤内の筋肉の動きを理解すると、スキップが、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)を鍛えるよいトレーニングになることがわかります。


■大腰筋トレーニング

反射を利用した大腰筋トレーニングを3つ紹介します。もうお分かりのように、大腰筋を鍛えようと思ったら、膝を高く振り上げるだけでは思うようにいきません。大腰筋が活動したくなる姿勢に追い込むところがポイントです。弊社制作の動画です。出演は、会員の谷口一也さんにお願いしました。



活法研究会 http://kappolabo.jp/

呼吸の話(5) 運動と呼吸

身体調整は呼吸を理解しないと始まらない


副代表の栗原です。
呼吸の話の最終回です。

ここまでの話のまとめ
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(1)膨張と収縮
(2)経絡と呼吸(前編)
(3)経絡と呼吸(中編)
(4)経絡と呼吸(後編)
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前回は、「経穴(ツボ)への鍼は呼吸調整の意図から生まれた」という話を書きました。今回は、呼吸と運動の関係について書きます。


■深呼吸ができる人、深呼吸ができない人

呼吸にとって重要な筋肉は横隔膜、そして外肋間筋です。ここでは呼吸の仕組みを詳しく解説することはしません。書いておきたいのは、呼吸はこの2つの筋肉だけではないということです。

深呼吸の女性

深く呼吸をするには、たくさんの筋肉の力を借りなければなりません。サポートしてくれる筋肉を並べて書いてみました。

  吸気時に補助する筋肉
   ・斜角筋
   ・胸鎖乳突筋
   ・肋間挙筋
   ・大胸筋
   ・小胸筋
   ・脊柱起立筋群

  呼気時に補助する筋肉
   ・内肋間筋
   ・腹筋

呼吸に関わっている筋肉がわかると、呼吸を整えるには、こうした筋肉を調整する必要性に気がつきます。一つ一つの筋肉の起始と停止をイメージして、順々にマッサージしてほぐしていくのも一つの方法です。


■呼吸筋だけでは呼吸にならない

私たちの活法では、呼吸に関わる筋肉を個別に観ることはしません。呼吸という一つの運動と見なします。筋肉単位ではなく運動単位で調整します。

人の体を観る上で大切だと思う視点は、

 斜角筋だけでは呼吸にならない
 胸鎖乳突筋だけでは呼吸にならない
 ・・・

ということです。つまり、一つ一つの筋肉が個別に働いたのでは呼吸にはならないのです。必要な筋肉が協調して動くから「呼吸」という運動になるのです。ですから、深い呼吸をさせようと斜角筋だけを緩めても、大きな成果は得られません。関連する筋肉を順々に緩めていけば、成果が出るかもしれません。

だとしても、筋肉の緊張を緩めるだけでは呼吸は深くなりません。深い呼吸のためには、関連する筋肉たちが協調して働く必要があるからです。


■姿勢が呼吸を深くする

私たちは、呼吸をはじめとする筋肉の協調関係を「連動」と言い表しています。すべての運動は連動によって成り立っています。

活法の目は、筋肉単位ではなく運動単位で観ます。運動単位で観られるようになると「連動」を利用した施術ができるようになります。

連動を使うためのヒントを書きます。呼吸を一つの運動として調整するには姿勢がポイントになります。息を吐きやすい姿勢、息を吸いやすい姿勢は何だろうか…と考えることが重要です。

呼吸が浅いということは、息を吐ききる姿勢が上手でない、息を思い切り吸い込む姿勢が上手でない、ということなのです。

活法研究会セミナーの一コマ


■活法と古武術鍼法

活法から生まれた古武術鍼法も基本的には同じように考えます。活法のように運動単位での調整ができます。冒頭に書いた通り、ツボからのアプローチがそもそも呼吸調整です。古武術鍼法のメリットは、ツボの性質を利用しながら、さらに運動単位で呼吸を調整できるところにあります。

古武術鍼法では、重律(じゅうりつ)という概念で、骨格連動系を整えていきます。古典的鍼灸との違いは次の図に示す通りです。

古典的鍼灸と古武術鍼法の共通点と違い

詳細は活法研究会サイトをご覧ください(古武術鍼法の特徴)。


■どんな場合であっても呼吸が基本

鍼であろうと整体であろうと、どんな流派であろうと、呼吸を整えることは健康づくりの基本です。この基本があるかないかで治療の奥行きと幅が決まると言ってもよいでしょう。

呼吸は、無意識に行われている運動でありながら、ある程度の範囲でコントロールもできます。循環、内臓、筋肉、関節のリズムと関わっている呼吸を制することができれば、最高のセルフコントロールになります。そういう分野を研究しているのは、このシリーズの最初で紹介した森田氏(呼吸の話1)です。

私の場合は、呼吸調整に長けているツボと、呼吸を運動単位で調整できる活法のよい面をそれぞれ利用しています。花粉症の治療など、古武術鍼法が生んだ得意分野が呼吸症状であることは偶然ではありません。

それぞれ追究している分野が違うようではありますが、こうやって整理すると、とても近く感じられて面白いです。


■活法を体験できる1日

2月と3月に、活法の世界を楽しむことができる「活法1日体験会」を行います。整体と鍼灸の二部構成になっていて、上半身編と下半身編を用意しました。

活法研究会(活法1日体験会)


もっと多くの鍼灸師に活法の術理を使って頂きたいので、体験会を開催しています。さまざまな流派の鍼灸師が集う勉強会です。新しい視点を手に入れるには最適な機会になると思います。

興味のある方は、定員(先着15名)になる前にお申込みください。

2月22日(日)東京会場 上半身編
3月1日(日)東京会場 下半身編 

活法研究会(鍼灸師のための古武術医方)
http://kappolabo.jp/

痛み、姿勢、動き、脳の関係を活用する方法

副代表の栗原です。

今回は、痛み、姿勢、動き、脳の関係について整理します。活法が、なぜ瞬時に痛みを取ることができるのか、その理由を明らかにします。

痛みの正体

この動画を観てからこの記事の読んでも、記事を読んでから動画を観ても、活法への理解がいっそう深まります。活法は、最先端の鎮痛機序を利用しているのです。


動画/ダッテルン、フェストこども青少年病院 ドイツこども痛みセンター

本来は必要でない痛みが体にあっても、それが本当に必要な痛みなのかそうでないのか、脳が混乱して区別できなくなってしまうことがあります。調べても原因がわからず慢性的に居付いている痛みは、脳の勘違いによって引き起こされたものです。
あなたの脳は勘違いをする
痛みは体の異常を知らせるSOSとしての役割があります。しかし、時にSOSが必要ないのに「痛み」を脳が作り出してしまっているケースが多々あります。

実は、必要のない痛みに苦しめられていることが多いのです。こうした痛みから解放されるには、脳の記憶を書き換える必要があります。脳の記憶を書き換えるために、活法では「動き」に注目します。脳は動きを記憶しているからです。

姿勢は動きの一部

想像してみてください。嬉しいことがあった時のことを。逆に嫌なことを思い出してみてください。思い出すエピソードによって表情も一緒に変わっているはずです。変化するのは表情だけではありません。体のあちこちで感情による変化が表れています。気分次第で姿勢も変わりますよね。

姿勢は「動き」を切り抜いたものですから、姿勢も動きの一部です。つまり、姿勢や動き方を見ることは、脳の記憶を探ることでもあるのです。記憶はインパクトが強かったものや反復されたものの方が深く刻まれます。痛みも同じです。なかなか消えない慢性的な痛みは、深く刻まれた記憶なのです。その記憶を消去したいのであれば、そこに上書きしなければなりません。その時も、インパクトや反復が必要です。

脳を騙すトリック

こうした考え方で治療を行う時は、「よい状態をしっかり印象づける」ことも必要です。一旦、痛みがあることを印象づけてからその痛みを消す、なんていうトリック的な手法もあります。脳を騙すテクニックです。これをズルイと思う人もいるかもしれません。しかし、この「騙し」はとても重要なのです。この部分を理解できるかどうかで、活法の本質にたどり着けるかどうかが決まると言っても過言ではありません。

マジックのイラスト

脳の記憶は反復でも上書きされますが、素早く上書きするために必要なのはインパクトです。そのインパクトに必要なのは落差です。ビフォーとアフターを脳が比較した時に感じる落差です。これに加えて左右差が重要です。左右を比べたときの印象の違いです。

私たちが活法を行う時、脳がすぐに気が付くように「わかりやすさ」を重視しています。わかりやすい、ということが脳に強いインパクトを与えます。脳が痛みを作り出す仕組みを知っていれば、違いのわかりやすい施術ほど良質なものとなります。

活法は「脳の働きを正常化させる」ものです。

「心理トリック≠活法」ですので間違わないでください。ビフォーアフターの差や左右差を、施術によってつくり出していなければ、まやかしになってしまいます。活法は心理学を利用しているわけですが、活法が心理学を後から取り入れたのではなく、心理学的要素が最初から盛り込まれているのです。活法が、武術の裏側として誕生したというルーツを知ると腑に落ちると思います。

まとめ

活法は「動きを変化させ、それを印象づける」ものです。その裏側には、脳の性質を上手に利用する心理トリックもあります。直接的には、皮膚、筋肉、骨にアプローチするのですが、その本質は、皮膚、筋肉、骨を通じて脳の記憶を上書きしているのです。もしくは、ネガティブな情報をキャンセルして、本来の動きを取り戻すように働きかけているのです。

このように、活法を語る上で無視できないのが脳なのです。解剖学や生理学で評価しても、活法の真の価値は見えません。脳科学の分野から評価した方が真の価値が見えてくるはずです。

こうした活法の知恵は整体だけでなく鍼灸にも活かすことができます。活法研究会では、活法を整体と鍼灸という2つの分野から研究しています。

活法研究会でのセミナー風景
写真/碓井流活法創始者:碓井誠


活法研究会 http://kappolabo.jp/

姿勢の歪み

副代表の栗原です。

「姿勢の歪み」とは何か…?

碓井流活法には、歪みの定義があります。

その前に一般的に「歪み」というと、まず非対称な体を思い浮かべることができると思います。言い換えれば左右の視点。肩の高さの違いに着目したりすることです。次に前後の問題。猫背であるかどうかに着目したり。

左右の問題は誰にでもわかります。折りたたんで重なるかどうかですから。誰でもわかるということは、施術者だけでなく患者さんも気が付く差であるということです。患者さんが認識できる差を施術者が指摘するのは、患者さんとの共通認識がとれるので便利です。

しかし、すべて左右の差で患者さんの訴え(痛みなど)が解結するわけではありません。前後の問題も考え、上下の問題も考えなければなりません。さらにいえば、対角線上の問題もあります。

前後、上下、対角線上の問題は、折りたたみ方式でチェックできませんから工夫が必要です。その方法が術者(流派)によって異なるわけです。結局、左右の問題以外は、主観が入り込んでしまうのです。主観というのは「これが正しい姿勢である」と決めつけることです。その定義された姿勢と患者さんの姿勢を照らし合わせて、その差を原因としていくわけです。

しかし、主観で判断する以上は確率から逃れることができません。吉となる場合もあれば、凶となる場合もあるでしょう。「真っ直ぐにしたはずなのによくならない。それどころか悪化した。」という経験をされた施術者も少なくないはずです。

活法は、術者の主観で歪みを判断することはありません。歪みは患者さんの身体に問うスタイルです。その方法は簡単です。動きやすいかどうかを患者さん自身にチェックしていただくのです。動いてみれば、「痛みがあって動けない」、「痛みはないが違和感がある」、「痛みも違和感もあるが可動域が違う」などがわかります。歪みがあるから動きにくさが出るわけです。

こう考えれば、動きやすい状態こそ歪みのない状態です。いわゆる「見た目」では判断しないのです。見た目では判断しないのが活法です。これは、武術を発祥とする活法の特徴だと思います。戦場において、何より優先させるのが動けることです。戦うことにおいても、逃げることにおいても、動けないと話になりません。

多くの患者さんが求めているのは快適に日常生活を送ることです。「見た目がキレイ」と言われても、日常が不快であれば意味がありません。つまり、活法の「自由に動ける=歪みがない」と考えるのは、鍼灸師いとっても合理的です。

活法は「見た目なんてどうでもいい」と言っているわけですが、“結果として”見た目も美しくなります。コマは回ると立ちます。回れば勝手にピタッと姿勢が決まるのです。自転車も走るから立ちます。走っていない自転車でバランスを取るのは至難の業です。

人が誰かを美しいと思うとき、その所作に影響を受けているはずです。写真はステキなのに会ってみたらそうでもなかったと思うのは、所作に違和感を感じるからかもしれません。

活法の定義する正しい姿勢とは「時と場合に応じた姿勢」です。
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