活レポ(活法研究会)

古武術整体「活法かっぽう」の症例報告とセミナー情報

経絡

呼吸の話(5) 運動と呼吸

身体調整は呼吸を理解しないと始まらない


副代表の栗原です。
呼吸の話の最終回です。

ここまでの話のまとめ
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(1)膨張と収縮
(2)経絡と呼吸(前編)
(3)経絡と呼吸(中編)
(4)経絡と呼吸(後編)
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前回は、「経穴(ツボ)への鍼は呼吸調整の意図から生まれた」という話を書きました。今回は、呼吸と運動の関係について書きます。


■深呼吸ができる人、深呼吸ができない人

呼吸にとって重要な筋肉は横隔膜、そして外肋間筋です。ここでは呼吸の仕組みを詳しく解説することはしません。書いておきたいのは、呼吸はこの2つの筋肉だけではないということです。

深呼吸の女性

深く呼吸をするには、たくさんの筋肉の力を借りなければなりません。サポートしてくれる筋肉を並べて書いてみました。

  吸気時に補助する筋肉
   ・斜角筋
   ・胸鎖乳突筋
   ・肋間挙筋
   ・大胸筋
   ・小胸筋
   ・脊柱起立筋群

  呼気時に補助する筋肉
   ・内肋間筋
   ・腹筋

呼吸に関わっている筋肉がわかると、呼吸を整えるには、こうした筋肉を調整する必要性に気がつきます。一つ一つの筋肉の起始と停止をイメージして、順々にマッサージしてほぐしていくのも一つの方法です。


■呼吸筋だけでは呼吸にならない

私たちの活法では、呼吸に関わる筋肉を個別に観ることはしません。呼吸という一つの運動と見なします。筋肉単位ではなく運動単位で調整します。

人の体を観る上で大切だと思う視点は、

 斜角筋だけでは呼吸にならない
 胸鎖乳突筋だけでは呼吸にならない
 ・・・

ということです。つまり、一つ一つの筋肉が個別に働いたのでは呼吸にはならないのです。必要な筋肉が協調して動くから「呼吸」という運動になるのです。ですから、深い呼吸をさせようと斜角筋だけを緩めても、大きな成果は得られません。関連する筋肉を順々に緩めていけば、成果が出るかもしれません。

だとしても、筋肉の緊張を緩めるだけでは呼吸は深くなりません。深い呼吸のためには、関連する筋肉たちが協調して働く必要があるからです。


■姿勢が呼吸を深くする

私たちは、呼吸をはじめとする筋肉の協調関係を「連動」と言い表しています。すべての運動は連動によって成り立っています。

活法の目は、筋肉単位ではなく運動単位で観ます。運動単位で観られるようになると「連動」を利用した施術ができるようになります。

連動を使うためのヒントを書きます。呼吸を一つの運動として調整するには姿勢がポイントになります。息を吐きやすい姿勢、息を吸いやすい姿勢は何だろうか…と考えることが重要です。

呼吸が浅いということは、息を吐ききる姿勢が上手でない、息を思い切り吸い込む姿勢が上手でない、ということなのです。

活法研究会セミナーの一コマ


■活法と古武術鍼法

活法から生まれた古武術鍼法も基本的には同じように考えます。活法のように運動単位での調整ができます。冒頭に書いた通り、ツボからのアプローチがそもそも呼吸調整です。古武術鍼法のメリットは、ツボの性質を利用しながら、さらに運動単位で呼吸を調整できるところにあります。

古武術鍼法では、重律(じゅうりつ)という概念で、骨格連動系を整えていきます。古典的鍼灸との違いは次の図に示す通りです。

古典的鍼灸と古武術鍼法の共通点と違い

詳細は活法研究会サイトをご覧ください(古武術鍼法の特徴)。


■どんな場合であっても呼吸が基本

鍼であろうと整体であろうと、どんな流派であろうと、呼吸を整えることは健康づくりの基本です。この基本があるかないかで治療の奥行きと幅が決まると言ってもよいでしょう。

呼吸は、無意識に行われている運動でありながら、ある程度の範囲でコントロールもできます。循環、内臓、筋肉、関節のリズムと関わっている呼吸を制することができれば、最高のセルフコントロールになります。そういう分野を研究しているのは、このシリーズの最初で紹介した森田氏(呼吸の話1)です。

私の場合は、呼吸調整に長けているツボと、呼吸を運動単位で調整できる活法のよい面をそれぞれ利用しています。花粉症の治療など、古武術鍼法が生んだ得意分野が呼吸症状であることは偶然ではありません。

それぞれ追究している分野が違うようではありますが、こうやって整理すると、とても近く感じられて面白いです。


■活法を体験できる1日

2月と3月に、活法の世界を楽しむことができる「活法1日体験会」を行います。整体と鍼灸の二部構成になっていて、上半身編と下半身編を用意しました。

活法研究会(活法1日体験会)


もっと多くの鍼灸師に活法の術理を使って頂きたいので、体験会を開催しています。さまざまな流派の鍼灸師が集う勉強会です。新しい視点を手に入れるには最適な機会になると思います。

興味のある方は、定員(先着15名)になる前にお申込みください。

2月22日(日)東京会場 上半身編
3月1日(日)東京会場 下半身編 

活法研究会(鍼灸師のための古武術医方)
http://kappolabo.jp/

呼吸の話(2) 経絡と呼吸(前編)

副代表の栗原です。

前回の「膨張と収縮」のつづきです。

呼吸と経絡には深い関係があります。ただし、その前に経絡のことを整理しておく必要があります。多くの鍼灸師が経絡を誤解し、誤解されたまま、経絡が批評の対象となっている現実があります。

なぜ経絡は気の流れるルートなのか

経絡を本来の意味で理解するためには、呼吸がキーワードになると考えています。「東洋医学では経絡という気の流れるルートがあると言われています」という説明から抜け出す方法を私は真剣に考えています。経絡は見えないエネルギーを想定して語るものではなく、現実に見える生命活動と重ねて語ることが大切です。

いったん、経絡を白紙に戻すことで鍼灸学は生まれ変わります。実際、経絡にとっくに別れを告げている鍼灸師も多くいます。皮肉なことにそうした鍼灸師の台頭が目立ちます。果たして、経絡には意味がないのでしょうか。私はそうは思いません。経絡は実用的なものです。問題は使い方です。


■踏み絵を踏んでみる

活法では経絡(けいらく)を使いません。鍼灸師である私は、そのことに衝撃を受けました。私にとって経絡は、ツボ選びの拠り所だったからです。鍼灸師から経絡を奪うことは、船乗りからコンパスを奪うことと同じ意味だと思っていました。

碓井流活法

経絡のない世界に寄り道してみると、それまで見えなかったものが見えるようになりました。寄り道のつもりで入り込んだ道には宝がいっぱいありました。

経絡から離れてみたことで、経絡のことがもっとわかるようになりました。経絡は、絶対的な指標にはなりません。経絡は、人体を診る上でひとつの切り口でしかありません。伝統を重んじる鍼灸師にとって、これは、キリシタンが踏み絵を踏むような行為です。こうした発言をした時点で出入り禁止になるところはたくさんあります。


■信仰と学問

私には、「医学は信じるものではなく学問」という信念があります。「経絡というものがあるらしい」の上に積み上げられた鍼灸には、信仰との境界線がありません。鍼灸を非科学的だと突く人の気持ちも理解できます。スピリチュアルな世界だと思われてしまうことも仕方ないと思います。そうであってもいいという人、そうあるべきだという人もいますが、私はそうではありません。

経絡は信仰の対象ではなくツールである

鍼灸は誰にでもわかる世界です。誰もがその恩恵を享受できるはずです。そのためには、経絡を「信仰」から「学問」に引き戻さなければなりません。そのために必要なのは、「経絡はあるか、ないか」という議論をやめることです。経絡は、鍼を運用するために創造された思考ルートであり運用ルートでしかないと私は考えています。

「ルート」という言葉は、「パターン」や「ツール」という言葉に置き換えてもよいと思います。経絡は、数学で言うところの数式と同じです。経絡という数式に当てはまる現象が多く見られるというだけです。ただ、人体の複雑性の前では、例外的な現象もたくさんあり、通用する時とそうでない時があります。


■柳谷素霊の亡霊

目に見えず、触れることもできない経絡。「見える、感じる」という人と真っ向から議論するつもりはありません。「誰もが見える、誰もが感じる」ものでないという意味ですから。

昭和鍼灸の歳月

経絡を否定したいわけではありません。そろそろ経絡信仰に終わりを告げてもよい時代かと思っているのです。柳谷素霊先生の亡霊に鍼灸業界は取り憑かれた状態です。鍼灸の昭和史を紐解けば、いわゆる経絡治療のみが経絡を運用できるわけでもなく、経絡を運用することがいわゆる経絡治療でないことは明白です。

これより先の話は、業界誌の『温故知新』の連載で詳しく書かせて頂いたので、興味のある方はバックナンバーをご覧ください。経絡信仰から脱却するため「経穴デザイン」という思考を提唱しています。今後の展開も含めて温かく見守って頂けたら幸いです。

つづく…経絡と呼吸(中編) でも、ほとんど経絡治療の歴史

活法研究会(鍼灸師のための古武術医方)
http://kappolabo.jp/

活法1日体験会(東京)
上半身編 2015年2月22日(日)
下半身編 2015年3月1日(日)
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