活レポ(活法研究会)

古武術整体「活法かっぽう」の症例報告とセミナー情報

腸骨筋

腸腰筋の研究−大腰筋と腸骨筋の連動を考える

副代表の栗原です。

教科書には載っているけれど、詳しい機能があまり知られていない腸腰筋の話です。
腸腰筋の理解を深めることで、次の3つのメカニズムがわかるようになります。

 1.姿勢の問題
 2.腰痛
 3.肩こり

それぞれに腸腰筋が関わっており、関わっていない場合でも、腸腰筋のような深層筋が深く関わっています。

インナーマッスルは、触れることができない体の奥深くに位置している筋肉です。インナーマッスルの中で最大級の筋肉は大腰筋です。腰椎から骨盤内を通って、股関節の内側に走る筋肉です。同じように股関節に内側と接続する腸骨筋と合わせて、腸腰筋と呼ばれています。

大腰筋腸骨筋

 ★腸腰筋
  └ ☆大腰筋(長い方、腰部から股関節の内側)
  └ ☆腸骨筋(短い方、腸骨の内側から股関節の内側)

腸腰筋の中でも、特に注目したいのは大腰筋の方です。その理由は、大きいからです。上端は胸椎の12番で、背中の方から骨盤を貫くように走り股関節の内側(大腿骨小転子)に届く長さがあります。これほど大きな筋肉であるにも関わらず、見ることも触れることもできません。意識しなくても誰でも使っています。

問題なのは、大腰筋の活動が低下しても、「大腰筋の問題」だと気がつかないところです。足腰が弱ってきた、という漠然とした感覚になってしまうのです。原因が漠然としていると対処しようがありません。活動低下がどんどん進んでしまうのです。老化が進んでしまう、と言い換えることができます。

大腰筋が特徴的なのは、反射的に働くことです。「力をギューと入れて…」と使うタイプの筋肉ではありません。伸ばされると、その反動で縮もうとする筋肉です。ですから、とても鍛えにくい筋肉で、トレーニングの穴になりやすいのです。表から見える筋肉をいくら太くしても、大腰筋が衰えていると、動きが若々しくなりません。

若い身体を保ちたいなら、大腰筋を無視するわけにはいきません。


■腸腰筋と姿勢の問題

姿勢にも深く関わっています。

大腰筋は、脚を後ろに引いた時に伸びます。この時、腰部に注目すると、脚を後ろに引くと、腰部が前の方に引っ張られて、いわゆる腰がそった状態になります。

大腰筋が衰えると縮んで硬くなります。すると、脚を後ろに引けなくなります。エビぞりもできなくなります。高齢になってくると腰椎の可動性が減るので“たわみ”が出なくなるため、大腰筋が縮むと、股関節を縮めて対応しようといます。その結果、前かがみ姿勢になりやすく「腰の曲がった」と言われる姿勢になります。裏返せば、大腰筋が活発であれば、腰椎が適度に刺激されるため腰椎の若さが保たれます。

身体を“反る”ことに着目してみると、大腰筋が重要ですが、逆に丸めようとする時に重要なのがハムストリングと呼ばれることが多い大腿二頭筋です。太ももの裏側の筋肉です。立位で前屈する時も長座で上体を倒しこむ時も、このハムストリングが突っ張ってきます。

 腰を反る  = 大腰筋(インナーマッスル)
 腰を丸める = 大腿二頭筋(アウターマッスル)

この2つの筋肉は拮抗する関係にあります。拮抗というと喧嘩しているみたいですが、実際には二つの筋肉が協力しあいながら引っ張いながらちょうどいいバランスにしているのです。ニュートラルな時の張力は均等が相応しいのです。厳密に言えば、バランス調整に関わる筋肉はこの2つではありませんから正しくないかもしれませんが、臨床上は、こうした理解で役立ちます。

たとえば、大腰筋に作用させたい時は、ハムストリングにアプローチし、逆にハムストリングにアプローチしたい時は、大腰筋にアプローチするのです。互いに力関係を合わせようとしますから、片方が緩めばもう片方が緩むのです。

直接触れることができない大腰筋に対しては、ハムスリングの調整が有効です。逆に、ハムストリングを調整するために大腰筋にアプローチしようと思っても直接的な刺激は困難です。しかし、問題はありません。古武術整体には、ハムストリングの性質を利用した手技があり、古武術鍼法には、ハムストリグに作用させるツボがあるからです。


■腸腰筋と腰痛

腸腰筋(大腰筋)の性質を知っていると、腰痛時の対処に幅が出ます。特に中高年の腰痛を分析する際には、欠けてはならない視点です。前屈、後屈で可動域制限がある場合、上記のように大腰筋とハムストリングの関係をチェックしておくことが大切です。大きな筋肉であるが故に、この2つの問題が存在していると、痛みが取れてもスッキリと解決しなかったり、頻繁に再発します。

腰痛予防にとっても、大腰筋とハムストリングの状態を整えておくことが大きな意味を持ちます。


■腸腰筋と肩こり

腸腰筋(大腰筋)は下半身だけの問題ではありません。

骨盤内にある腸骨筋(大腰筋、腸骨筋)は、脚の動きに深く関わっています。その脚は腕の動きと連動しています。四足歩行の動物にして考えると、骨盤から脚は後脚で、腕から肩甲骨は前脚です。

「前脚の異常=肩こり」

と考えれば、後脚である骨盤から脚の問題を放っておくことはできません。実際に多くの肩こりが下半身に原因があります。揉んでも治らない肩こりには、腰、臀部、脚のケアを意識することが大切です。


■大腰筋と腸骨筋の連動

この動画をご覧ください。弊社で作成した教材用の動画です。



脚を後方に振り上げると大腰筋が伸ばされ、収縮しようとします。ゴムのような弾力を体内で感じた後、脚は加速するように勢いよく戻ってきます。そのまま膝を高く引き上げようとすると、途中で腸骨筋のバトンタッチします。気がつかないようにバトンを渡すので、2種類の筋肉を感じ取るのは難しいでしょう。

大腰筋と腸骨筋は、大腿骨の小転子で一緒になっているので、一つの筋肉が二股に分かれているようにも見えます。構造的にも、2つの筋肉は連動して働くようになっているのです。この例のように身体は単独の筋肉を動かすように出来ていません。目的の動作のために、筋肉は他の筋肉と協調して働いています。

ですから、大腰筋に働きかけると腸骨筋にも作用が及びます。逆に、腸骨筋に働きかけると大腰筋に作用が及びます。このような理由で、この2つの筋肉は混同してしまいがちです。特に見かけるのは、腸骨筋の機能を大腰筋と勘違いしている例です。膝を高く上げる際に重要なの腸骨筋ですが、大腰筋の働きと解説されているものを多くみかけます。


■大腰筋の働きをチェックできる簡単な方法

スキップが上手にできるかどうかで、腸腰筋の状態を判断できます。もともと上手な人もいれば、そうでもない人もいるので個人差は考慮します。

スキップは、まさに腸腰筋のテストとトレーニングのために存在するような動きです。右脚で蹴っている時、大腰筋が引き伸ばされ、左脚は膝を高く引き上げるために腸骨筋が働いています。腸腰筋である、大腰筋と腸骨筋が同時に使われています。

右の腸骨筋を使って膝を高く上げるほど、左の大腰筋は伸ばされます。ですから、大腰筋の調子がよいほど、膝を楽に高く挙げることができます。こうした骨盤内の筋肉の動きを理解すると、スキップが、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)を鍛えるよいトレーニングになることがわかります。


■大腰筋トレーニング

反射を利用した大腰筋トレーニングを3つ紹介します。もうお分かりのように、大腰筋を鍛えようと思ったら、膝を高く振り上げるだけでは思うようにいきません。大腰筋が活動したくなる姿勢に追い込むところがポイントです。弊社制作の動画です。出演は、会員の谷口一也さんにお願いしました。



活法研究会 http://kappolabo.jp/

ガニ股歩きと腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)の関係

副代表の栗原です。

骨盤、腸腰筋、ガニ股の関係を詳しく解説しました。

昨日、「孫のガニ股歩きを直してほしい」という要望があったので施術しました。クライアントは以前に通院していた方の小学2年生のお孫さんです。私の鍼灸治療が「動き」にフォーカスしていることを感じて、「何とかしてもらえるだろう」と踏んでの予約でした。

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私の息子も同じ小学校2年生。このくらいの年齢ですと、鍼をすることもあれば活法(整体)のみのこともあります。今回は迷わず活法のみで。

広いところで歩いてもらうと、確かに、脚を外の方に振り出すような歩き方です。わざとそういう歩き方をするキャラもいますが、小学2年生ですから体の問題です。

「ガニ股」となる原因はいくつか考えられますので、ベッドに乗ってもらってチェックしました。お母さんとお祖母ちゃん、2名のギャラリー付きです。

 1.膝が曲がっていないか(O脚のチェック)
 2.股関節が外旋しすぎていないか(きちんと内旋できるかどうか)
 3.腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)の緊張


1と2は全く問題ありません。キレイで真っ直ぐな脚をしています。

3でひっかかりました。腰椎から股関節に内側をつなぐ骨盤内を通る巨大な筋肉が腸腰筋です。この筋肉の主な働きはもも上げです。サッカーボールを太ももの上でポンポンとするリフティングを思い浮かべてください。この時、腸腰筋(主に腸骨筋)の力でボールを蹴っています。

他に典型的なのはスキップです。腸腰筋がうまく使えないと上手にスキップができません。逆に言えばスキップが上手な人は腸腰筋の使い方が上手だと言えます。

スキップの姿勢


大腰筋と腸骨筋で構成される腸腰筋ですが(厳密には小腰筋もあります)、それぞれに役割が少し違います。骨盤から始まっている腸骨筋が縮むと、骨盤を基準にして大腿が屈曲します。膝が胸の方に近づく動きです。ポイントは骨盤と大腿骨の距離が縮むような動きです。

腸骨筋


いっぽうの大腰筋は、胸椎の12番目から腰椎の1〜5番目から始まっています。ですから、腰椎と大腿骨の関係です。腰椎と大腿骨内側(小転子)の位置関係から、大腰筋が機能するのは大腿骨が後ろに引かれた状態から戻る動きです。大腰筋は、伸ばされてから戻るという性質が主になっていると思われます。伸ばされたら戻るという「伸張反射」が大腰筋を考える上でのポイントです。

大腰筋



スキップで言うと、膝が高く上がっている方が腸骨筋、蹴り脚になっている方が大腰筋、というわけです。スキップは腸骨筋主導の動きと大腰筋主導の動きを瞬間的に発動し、それを交互に繰り返すという、まさに腸腰筋のためにあるような動きです。ピョンという瞬間的な筋肉の使い方が大事です。その蹴り脚のピョンが大腰筋の伸張反射を引き出すからです。


ここで、ガニ股歩きに話を戻しましょう。

大腰筋が緊張しすぎて働いていないと、片膝を抱えようとすると、もう片方の腸腰筋(特に、腸骨筋)が大腿を一緒に引き連れてしまうので、太ももが浮き上がって骨盤が捻れるように傾いてしまいます。この状態は後ろ脚をまっすぐ後ろに残せないことを意味します。

例えば、右脚を抱えていれば、骨盤の左側が浮き、全体は右の方へ回旋します。右脚が前に出た時、骨盤が右回旋しやすい状態です。そもそも骨盤が右回旋しているのですから、脚を真っ直ぐに振り出しても右前方になってしまうのです。

大腰筋がよい状態
<右脚を抱えた際に左の大腿が浮いていない>

大腰筋が悪い状態
<右脚を抱えると左の大腿が浮き、骨盤が右に捻れる>

こうして考えると、原因は、振り出し脚の方ではなく、後方に残る蹴り脚の方です。ただ、実際には左右それぞれの腸腰筋に異常があるケースがほとんどですから、左右とも調整の必要があります。

活法研究会では、伸張反射を利用した調整法を2種類用意しています。大腰筋の牽引では、スキップのピョンの状態を術者が瞬間的に作り出し、伸張反射がしっかり出る大腰筋の状態を作ります。大腰筋を調整すると、ピタリとくっついている腸骨筋も同調して収縮力が回復します。

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<大腰筋の牽引>

導引は、大腰筋と強調して働く筋肉を一緒に巻き込むことができるので、大腰筋とその周辺の筋肉が調和します。この中に腸骨筋も含まれます。筋肉の連動性をより高めたいときは導引を用います。

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<大腰筋の導引>

今回の小学2年生の症例では、こうした技術を用いて調整を行いました。1回の施術でピタリと直るものではありませんから、こうした癖の修正は自己トレーニングが大切です。簡単なトレーニング方法をお伝えして初回を終えました。1ヶ月後にまた見せて頂く予定です。


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